静岡・熱海の「韓国庭園」と”日韓グルメフェア”とは?~2000年日韓首脳会談で金大中大統領が訪れた日韓ゆかりの地

東京や横浜からほど近い由緒ある温泉地として知られる静岡県熱海市。熱海市には1886年(明治19年)に開園した熱海梅園があります。

■日本一早咲き、日本一遅い紅葉
この熱海梅園には樹齢100年を超える梅の木があり、その種類も60品種におよびます。そして年明け前の12月に梅の花が咲く木があることから「日本一早咲き」とも言われます。一方で比較的温暖な熱海では紅葉の時期が遅く、「日本一遅い紅葉」としても知られます。

熱海梅園では新緑はもちろん、夏にはホタル観賞も愉しめるので、四季折々の姿を堪能できるといえますが、観光としての最盛期は梅の花が咲く冬から春、さらに晩秋には紅葉が鑑賞できるということで、秋冬を彩る庭園といえるでしょう。

■知る人ぞ知る「韓国庭園」の存在
そんな日本の自然景観が美しい庭園の一角に「韓国庭園」が造成されているのをご存じでしょうか。訪れたことがある方は知っているでしょうが、韓国に関心がある方のなかでも「知る人ぞ知る」という庭園なのです。

熱海梅園韓国庭園は2000年に熱海で開かれた日韓首脳会談を記念して熱海梅園内に造成されたもので、2002年8月に開業しました。当時の日韓首脳会談は日本の森喜朗総理大臣と、来日した韓国の金大中大統領による会談でした。

そんなことから韓国庭園には「友好 平和」と刻まれた両首脳連名の石碑が置かれています。

金大中大統領は1998年の小渕恵三首相との日韓共同宣言で韓国での日本文化開放を決定し、2002年の日韓共催サッカーワールドカップの時の大統領でもあり、こうした金大中政権の歩みのなかで、日韓の文化交流の大きな進展へとつながったともいえます。

■韓国庭園はどんな場所なのか
夏に韓国庭園の外庭を歩いてみると、韓国の国花であるムクゲの花が咲いていました。春にはアンズも花を咲かすそうです。韓国でも咲く花木が植えられています。

大門をくぐって中へと入ってみると……。

内庭の中央には韓屋が建てられています。これは朝鮮時代(16世紀)の当時の貴族階級・両班が暮らしていた韓屋を再現したものです。「マル」という日本でいう板の間は四方に壁がなく開放的な作りになっています。

中を覗いてみると当時の暮らしている人の人形が置かれており、書物を読んでいるようです。

韓屋だけでなく庭には木が植えられていたり、そのほかの造形物もありますが、キムチや味噌を漬け込んでおくための甕が置かれています。今でも韓国の伝統家屋や地方の大きな家には置かれていることが多いものです。

■朴敬元飛行士の墜落の慰霊碑
韓国庭園の外庭には日本統治時代の1933年に羽田から京城までの飛行を計画し、熱海で墜落した女性パイロット朴敬元飛行士の慰霊碑が置かれています。

墜落したのはこの場所ではないのですが、韓国庭園の造成の際に作られました。このように熱海は「日韓友好の場」として位置づけるに根拠があるわけです。

■日韓関係の改善で韓国からも訪れるか!?
コロナ禍明けの観光需要で、韓国からの訪日観光客が非常に多い状況ですが、韓国では熱海温泉を知る人はよほどの日本通の人くらいだといえます。大分県の別府温泉のような知名度はありません。

そんななかで熱海に韓国にまつわる庭園があるということで、これが韓国国内でも大きく知られるようになれば、一度は訪れてみたいという韓国現地の方も出てくるはずです。

そういったことを踏まえると、韓国庭園の知名度が上がれば、熱海温泉の今後にもひとつ期待ができそうです。

■日韓グルメフェア2023 in 熱海の開催
熱海梅園に行ってみたいという方へ、この秋、韓国にまつわるイベントが開催されます。その名も「日韓グルメフェア2023 in 熱海」。2023年11月11日、12日の週末の両日、11:00~17:00(2日目は16:00)に開催されます。熱海梅園の韓国庭園と、庭園内の中央広場で行われるイベントです。

主催は日本韓食振興協会で、熱海市との共催で行われます。熱海梅園もみじまつりの1日目、2日目に開催されるので、両方のおまつりが楽しめます。

「日韓グルメフェア2023 in 熱海」のメインとなる行事は韓国庭園内で行うキムチ作り<キムジャン>体験イベント(要予約 ※5500円)です。韓国庭園に建てられた韓屋を前にして、日本にいながら韓国の雰囲気を感じつつキムチの漬け込みを楽しめます。

わざわざ韓国の江原道の白菜を取り寄せて、韓国の唐辛子の名産地、慶尚北道英陽(ヨンヤン)郡の唐辛子を使って体験するという、かなりこだわったキムジャンイベントです。

そのほか農楽を伝統風にアレンジした舞台芸術のサムルノリの演奏パフォーマンス、韓国グルメ屋台の出店、伝統衣装体験(韓国・日本)などが行われます。

小田原・熱海・伊豆方面へのドライブがてらに、熱海温泉への宿泊旅行も含めて、韓国要素を感じてみたい方にお伝えしたいイベントです。また地元周辺の方にとっては珍しいイベントといえるかもしれません。

■熱海梅園へのアクセス方法
熱海へは新幹線を利用した場合は新横浜からは30分、品川からは約40分となります。東海道線ではそれぞれ1時間20分、1時間45分程度となります。

熱海梅園へは熱海駅からバスを利用するか、JR伊東線来宮(きのみや)駅から徒歩10分です。熱海梅園もみじまつり開催中は、無料駐車場が運営されています。

日本韓食振興協会
詳細:日韓グルメフェア2023 in 熱海

熱海梅園(熱海市ホームページ)
詳細:熱海梅園

吉村剛史(トム・ハングル)

投稿者: 吉村剛史(トム・ハングル)

1986年生まれ。ライター・メディア制作。大学時代から韓国にハマり、20代で韓国100市郡・江原道全18市郡踏破。1年8か月のソウル滞在経験があり、2021年1月に『ソウル25区=東京23区』を出版。新大久保の記事は「散歩の達人」2018年2月号 コリアンタウン特集、「新大久保コリアンタウン70年史」(海外ZINE)他 。プロフィール詳細 ホームページ Twitter:@tomhangeul